屋久島の植物について

屋久島の植物について

屋久島の神秘を彩る美しき植物3

植物は気候の変動によって南下したり北上したりして生きる場所を求めてきました。九州と台湾を結んで南北に連なる南西諸島はその通り道となり、中でも屋久島では亜熱帯から亜寒帯(高山帯)まで幅広い気候帯にしたがって南と北の多様な植物がすみつきました。また、屋久島の多量の雨と自然の大地が特徴ある生育環境を生み、屋久島でしか観られない固有植物を誕生させる事になりました。

ツワブキ
ツワブキ

■ツワブキ
県道沿いや林の下などに鮮やかな黄色の花が咲き乱れる季節が来ると、屋久島にすっかり秋が来たと思わせるツワブキの花。春の若茎は山菜として、花は「オコバナ」と称して11月に日蓮の命日にお供えする集落もあり、生活に密着している植物のひとつと言えるでしょう。
形状は、蕗(フキ)に似ていますが、葉は濃緑色で光沢があります。キク科は同じですがその下の分類となる“属”が違います。
薬としては、根茎を“タクゴ”といい、昭和62年まで恵命我神散の処方に入っていた植物です。薬効・薬理は、根には健胃、食中毒、下痢に、葉には抗菌作用があります。
屋久島・種子島だけに生育する固有のカンツワブキもあります。葉のふちのギザギザがツワブキよりも、より多く見られる事が特徴です。また2種が混ざってハイブリッドのような種も観察されます。
(写真はツワブキの花。)

カンツワブキ(種・屋久固有)
▲カンツワブキ(種・屋久固有)
ツワブキ
▲ツワブキ
ゲンノショウコ
ヤクシマフウロ

■ゲンノショウコ(写真左上ピンクの花)・ヤクシマフウロ(写真左下白い花)
ゲンノショウコは、(現の証拠)と名のとおり、大腸炎などの下痢止めや健胃整腸薬、腫れ物やしもやけに外用したり、茶の代用にしたりと幅広く利用され、民間薬として知名度が高いものです。その歴史は江戸時代にさかのぼるとされています。ゲンノショウコの分布は北海道から九州まで日当たりの良い山野や道端に普通に見られます。
ゲンノショウコの属するフウロソウ属は、日本で10余種が知られており地方の方言も多くある事から、多くの地域で利用されていた事がうかがえます。それらもまた、下痢止めに用いられています。屋久島にも固有変種であるヤクシマフウロがあります。同じような薬効がありますが、これは薬草としてではなく遺伝的に保存されるべき種です。

ハナガサノキ

■ハナガサノキ
屋久島を北限とする常緑のつる性低木。薬用は根(羊角藤〈ヨウカクトウ〉) の部分であるが、実の形が面白い。初夏に枝先に花が集まって咲き、秋に写真のように果実が互いにくっついた球形となり赤く熟します。
薬効の詳細は不明ですが民間薬的に去風湿、解毒、消腫などの効果があると言われています。