生薬について

生薬とは

自然界にある植物や動物、鉱物などにおいて、長い経験の中で薬効があるとされた物質を、保存するために乾燥したり、大きさをそろえたり、形を整えるなどして、利用しやすく簡単に加工したものを生薬(しょうやく)と呼んでいます。

莪蒁(ガジュツ):Zendoariae Rhizoma

ガジュツ
莪蒁(ガジュツ)
来歴
莪蒁(ガジュツ)の原植物は、インド、ヒマラヤ地方原産で、紀元前700年代に欧州に伝えられました。経史証類大観本草、政和本草には、蓬莪蒁(ほうがじゅつ)として記録されており、古くから薬用に使用されてきました。本邦では福田方(1368)に初見され、日本薬局方には、第3版(明治39年)から収載されています。
現在は、インド、中国を始め、わが国(屋久島・種子島)でも栽培されています。
基原
ショウガ科(Zingiberaceae)莪蒁(ガジュツ)の根茎を乾燥したもの。
学名
Curcuma zendoaria Roscoe
性状
長卵形を呈し、長さ4~6cm,径2.5~4cm。清涼感のある特異な芳香があり、味は辛くて苦い。
成分
精油1)(1~1.5%)
モノテルペン:1,4-cineole, d-camphor, d-camphene, d-α-pinene, d-borneol, et al.
セスキテルペン:dehydrocurdione,curcumol,zederone, curzerenone, curdione, curcolone, furanodienone, curcuminoids , et al.
精油含量2)は、日本産(1.13%)>台湾産(0.51%)>中国産(0.46%)の順に多い。
その他、フラボン配糖体、樹脂、デンプン、ゴム質などを含有。
適用
芳香性健胃薬の配合剤(胃腸薬)の原料
薬理作用
胆汁分泌促進作用3,4)胃機能促進作用5)胃粘膜修復作用6)抗潰瘍作用7)
抗炎症作用8)抗腫瘍作用9)抗菌作用1,10)抗肝障害作用11)パパベリン様作用4,12)
古典13)
[胸腹痛、中悪(吐き気)、疰忤(しゅご)(急に物に驚いたときの心痛)、鬼気(きき)(神経症の一種)、霍乱(かくらん)(吐き下し)、腹痛、手足の冷え、冷気で酸水をはくもの、解毒、婦人の血気、結積(月経のとどこおり)、男子の奔豚(ほんとん)(腹から胸に突き上げる動悸の様なもの)](開宝)
[肝経の聚血(血のとどこおり)を通じる](好古)
[一切の気を治し、胃を開き、食物を消化し、月経を通じ、瘀血(おけつ)を消し、撲損通(打ち身の痛み)、下血、及び内損の悪血を止める](大明)
[痃壁(げんへき)(悪性の出来もの)、冷気を破るには酒でねって服す](甄権)

真昆布(マコンブ):Laminaria japonica Areschoug

真昆布(マコンブ)
概要
眞昆布(まこんぶ)は、日本北部の海岸に産する褐色の藻類で、主に食用として使用されていますが、民間薬として古くから体質改善や胃腸に用いられていました18)
基原
コンブ科(Laminariaceae)の眞昆布(まこんぶ)の葉茎部を乾燥したもの
学名
Laminaria japonica Areschoug
成分14)
炭水化物(alginic acid, galactose, mannitol, laminarin, laminin)
アミノ酸(glutamic acid, proline), ミネラル(ヨウ素、臭素、カリウム、鉄、カルシウム)
薬理作用
消化管粘膜保護作用15) 止血作用16) 降圧作用17) 平滑筋収縮抑制作用17)
古典14,18)
瘰癧(るいれき)、癭瘤(えいりゅう)、水腫、睾丸腫、甲状腺肥大、脚気、高血圧、食欲促進、軟堅散結、化痰清熱

鬱金(ウコン):Curcumae Rhizoma

鬱金(ウコン)

鬱金(うこん)(英語名ターメリック)は、多年生草本であり、インド・東南アジア原産とするショウガ科「(Zingiberaceae)の鬱金(うこん)(学名:Curcuma longa L.)」の根茎を乾燥したもので、特異なにおいがあり、味はわずかに苦く刺激性です。日本には、平安時代中期に中国から渡来したと言われています。西南暖地で自家用程度に栽培されることがあり、屋久島、種子島以南の南西諸島では、野生化しているのが見られます。古くから料理用のスパイスや染料として利用され、主な用途はカレーの原料です。主成分19,20)は、黄色い色素のクルクミンを初めとするcuruminoid類と精油のtumerone等で、健胃、胆汁分泌(注)、止血等の作用19,20)があり、芳香性健胃薬の原料で各種処方に配合されています。また、「日本薬局方」の第14改正第2追補から生薬として収載され、近年は、人気のサプリメント素材でもあり、その医学的有効性に関しては多くの研究が行われています。しかし、信頼できる有効性の評価は、確立されていません21,22)
(注)胆汁分泌作用:ガジュツ>ウコン3)

生姜(ショウキョウ):Zingiberis Rhizoma

生姜(ショウキョウ)

生姜は、多年生草本でありショウガ科 (Zingiberaceae)のショウガ(学名:Zingiber officinale Roscoe)の根茎、またはコルク皮を去り乾燥したものです。 形状は、偏在した不規則な塊状でしばしば分枝し、やや湾曲した卵形又は長卵形を呈し、長さ2~4cm、径1~2cmです。また、特異なにおいがあり、味は極めて辛いのが特徴です。原産地は、インドまたは東南アジア諸島であろうとされています。 現在では、熱帯、温帯の各地で栽培され、日本でも栽培されていますが、日本産のものは主として食用とされています19)。また、精油成分のzingibereneや辛味成分のshogaol、gingerol類19,20)を含み、体を温め、新陳代謝機能を高める作用があります。かぜ薬や胃腸薬の配合剤、矯味剤として用いられる他,鎮嘔,鎮痛,止瀉などの漢方薬の配合剤としても高頻度に用いられています19,20)

■引用文献

1) 江蘇新医学院:中薬大辞典 下冊 2450 上海化学技術出版社 1972.
2) 渋谷博孝、他: 薬学雑誌 106(3)212 1986.
3) 水野修一、他:和漢医薬学雑誌 12 324 1995.
4) 前田初代、他:薬学雑誌、104(6)640 1984.
5) 原 茂雄、他:基礎と臨床 15(5)2386 1981.
6) 岡田昌之、他:胃粘膜血流量増加作用について
7) 渡辺和夫、他: 薬学雑誌、106(12)113 1986.
8) T. Yoshioka, et al. : Inflamm. res. 47 476 1998.
9) 小菅卓夫、他:薬学雑誌 105(8)791 1985.
10) 上地俊徳、他:熱帯農業 44(2)138 2000.
11) 山原條二、他: 薬学雑誌 102(3)306 1982.

12) 糸川英治、他:生薬 37 223 1983.
13) 鈴木真海訳:「国訳本草網目」第四巻 1930.
14) 江蘇新医学院:中薬大辞典 上冊 1351 上海化学技術出版社 1972.
15) 醍醐皓二、他:薬学雑誌 101(5)452 1981.
16) 醍醐皓二、他:薬学雑誌 101(5)458 1981.
17) 小澤 光、他:薬学雑誌  87(8)935 1967.
18) 丸山房雄:科学的説明を加えた民間薬及其利用法 96 日本薬学講習会1925.
19) 高木敬次郎、他 編集:和漢薬物学 南山堂 1982.
20) 難波恒雄, 津田喜典編集:『生薬学概論』 改訂第3版 南江堂 1998.
21) 梅垣敬三:調剤と情報 20(10)75 2014.
22) 日本薬剤師会環境衛生委員会:日本薬剤師会雑誌 66(1)53 2014.