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このシリーズも今回で最終回となりました。
毎回、楽しみに読んでくださった人のなかには、恵命我神散の愛好者も多かったと思もわれます。最後に、胃腸の良薬、恵命我神散について話しておきましょう。

※ 次回からは、第2章といたしましてー 生薬 −について話していきたいと思います。
  お楽しみに!

胃腸疾患と肝疾患の予防と治療
恵命我神散の主薬はガジュツである。ガジュツはショウガ科の植物「クルクマ・ゼドアリア・ロスコウ」の根茎で、インド・ヒマラヤの原産であるが、日本では屋久島、種子島が主産地で、恵命我神散のガジュツも日本産のものが用いられている。

ガジュツには、愛用者の方はよくご存知のように、カンフル様の香気があり、芳香性苦味健胃薬とされる。 しかし中国では健胃薬というよりは、むしろ気滞、血於の薬とされており、ガスがたまって腹が張るのを治したり、生理不順など血液の循環障害を治したりする薬と考えられている。また最近の研究では、ガジュツを投与すると胃の運動が促進することが、レントゲン写真で確かめられている。もう一つ、これも最近の研究であるが、ピロリ菌というのが発見されて、これが慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍の原因になることが判明した。ガジュツはこのピロリ菌を死滅させることが明らかとなった。
(ただし、治療法として学会で確立されたものではなく、除菌治療剤としての適用はありません)

つまりガジュツは、一面において食べ過ぎなどによる腹痛を、胃の運動促進などによって解決するとともに、ピロリ菌による潰瘍生成を阻止し、合わせて生理不順などにも効くという一石三鳥くらいの効果があることがわかったのである。

恵命我神散にはガジュツのほかに、同じショウガ科のウコンとショウガが矯味をかねて加えられており、さらには、真昆布も加えられているが、主薬はあくまでもガジュツと考えて良いだろう。

漢方「証」(体質十症状)
さて、漢方「証」(体質十症状)で言えば、恵命我神散は平生、比較的胃腸の丈夫な方が予防的に、また食べ過ぎたなと思った時に飲むとよい薬である。

体質が虚弱で顔色も悪く、下痢しがちの人には、香砂六君子湯(コウシャリックンシトウ)(手に入らなければ六君子湯)をおすすめする。その他、胃腸疾患といっても色々なケースがあるわけであるから、この二つでうまく処理できなければ、漢方専門医に相談した方がよい。

下痢とは逆に、便秘はごくありふれた病気であるが、コロコロ便を対象として痲子仁丸を使って、よい結果が得られることが多い。
ただしこれは比較的弱い人向きの薬で、顔色のよいガッチリしたタイプの人の便秘には、三黄丸がよい。もちろん便秘があったらすぐ薬と考えるのは間違いで、繊維に富んだ野菜を十分に食べることと、毎日歩くことがまず必要である。

胃腸疾患も病気になってから薬を飲むのではなく、バランスの取れた食物をよく噛んで食べること、夜遅くには食べないこと、体を冷やす物を食べ過ぎないこと、アルコールや甘い物を取り過ぎないこと、よく歩くことなどに気をつけて、胃腸疾患にならぬようにすることが大切であろう。

肝疾患については、肝はやまい癇に通じており、癇癪をおこすことが一番悪い。いかにして怒らないようにするか、癪に障ることがあったら縁の多いところを深呼吸しながら歩いて、気を鎮めるのが一番よい。
もう一つの原因はアルコールを飲む人も休肝日を作るとか、量を減らすなどして、肝疾患にならぬよう心がけるべきである。
漢方薬としてはガッチリタイプに大柴胡湯(ダイサイコトウ)、中肉中背タイプに小柴胡湯(ショウサイコトウ)か柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)、虚弱タイプに柴胡柱枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)か補中益気湯(ホチュウエッキトウ)(いずれも柴胡が入った薬)が用いられることが多いが、病気になってから 薬を飲むよりも日常の養生こそ大切であることは、胃腸疾患と同様である。
なお食物としては、バランス食の他に、低脂肪高タンパクいうことが一応の目安となろう。



健康相談、漢方についての情報〜医学博士:桑木 崇秀氏 医学博士:桑木 崇秀氏
元北里研究所付属東洋医学総合研究所部長
現在、千代田漢方クリニックで診療にあたっている。

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